帚木蓬生

ギャンブル依存症(病的賭博)は、やめられない病の中でも群を抜いて最悪。 まず、他の依存症と比べて、“やめられない”度合いの強さです。病気が進めば本人の意思など存在しないも同然で、ただただギャンブルのことしか考えられなくなってしまう。中途退学、失職、転職、家庭を持ったところで家庭不和や離婚が早晩やってきます。社会的な信用は失われ、家族親類からは忌み嫌われ、軽蔑されます。さらに悲惨なことは、本人がギャンブル地獄に転落するまでに、家族が借金返済のために甚大な出費をしてしまっていることです。何百万円というのはまだましなほうで、数千万、中には一億を超えるケースもあります。 日本のギャンブルの年商は三〇兆円といわれていますが、その八割五分がパチンコ業界の年商といっていい。残りの一五%が競馬、競輪、競艇、オートレースが分け合っていて、宝くじやサッカーくじは大したことはない。これだけの破綻者が出ているのに、パチンコをただの遊技として認めているのは世界でも日本ぐらいしかない。パチンコ、スロットを主流とするギャンブル依存は、人間の人格まで破綻させてしまう恐ろしい病気なのにもかかわらず、今までそれほど注目されてこなかった。それはこの三〇兆円産業にはあらゆる業界が関わっているからなんです。テレビ会社も新聞社も、パチンコ、スロットの宣伝、チラシがなければ成り立たないし、他にも液晶会社、電飾会社、建築、土木、いろいろな業界が密接に関わっている。この業界をつぶしたら自分たちが食っていけなくなりますからね。